高校に入学するとき、俺の中には、「あるべき高校生像」があった。「下駄orメガネがデフォルトで、授業にあまり出ず、屋上や喫茶店に棲息していて、SFやジャズや議論が好きで、翻訳されていない英米の本を友人たちと訳して同人誌を作ったり、バンドをやってるやつがいて、学校中退して世界を放浪してみたり、一人ぐらいは東大に行き、やがてそいつらは作家や映画監督や弁護士や政治家として再会する」そんな高校生。はいるわけがなかった。 でも、いつも思っていた。同世代、この日本のどこかに、いつか「天才」と呼ばれる奴がいて、そいつは俺のことなんておかまいなしに、自信にあふれて自分の道を進んでいるんだろうって。空手バカボンの曲に、なんかそういうのあったな。ほら、屋上の上で猫がどうのって曲。あ、あと、最近読んだのでは、『天才ファミリーカンパニー』とかね。 自分がそういう物語の主人公ではないことに落ち込んでみたりね。そういう