テレビや新聞が毎日のように伝える、やるせない凶悪事件の一部始終、そして犯行動機。見知らぬ者を襲う通り魔、あまりにも残忍すぎる殺害方法……。 これまでは、人が死亡した事件を含む重大な刑事裁判に、私たち一般人が関与することはなかった。しかし今年の夏以降は、一般人の中から選ばれた「裁判員」が加わって、有罪か無罪か、有罪の場合に、刑罰のサジ加減はどうするか、決めなければならない。 もはや、対岸の火事として見過ごすわけにはいかなくなった。 たとえば、あなたがとある凶悪事件の裁判員に選ばれたとしよう。法廷の弁護人は、被告人の犯行を認めたうえで、こう力強く主張するかもしれない。 「ただし、被告人は犯行当時、心神喪失の状態にあり、刑法上の責任能力を欠いていた可能性があります」「よって、無罪を主張します」 ここで無罪を主張できるのは、刑法39条1項に「心神喪失者の行為は罰しない」と書かれているからだ。 そし