記事:明石書店 100を超える著作を遺し、イスラーム史を通じて最高の学者と言われるイブン・スィーナーが著した『医学典範』の写本。ラテン語にも翻訳され、18世紀にかけてヨーロッパの大学で権威あるテキストとして重用された。 書籍情報はこちら イスラーム文明にまつわる先入観 近年では、ヨーロッパが中世の「暗黒」時代に長らく停滞した間、文明の最先端を歩んでいたのはイスラーム世界であったとする史観がみられるようになった。ただしそれと表裏一体に、現代の我々が享受する先進科学技術文明はルネサンス以降のヨーロッパ文明が生み出したものであり、イスラーム文明はそれに取って代わられた過去の文明だという先入観もまた、いまだ根強く残っている。イスラームという宗教に対する理解不足や偏見も、それを助長している。 そして、西欧社会が忘れられていた古代ギリシア・ローマ文明をルネサンスによって「復興」させ、近現代科学文明へと
