後ろ姿が人混みに消えて見えなくなってから、アーデはのほほんとしている長身の男をキッと睨みつけた。 「なんで邪魔をしたの、ユーグ!」 「これはおひどい。アイトルフ侯が本当にずっと捜しておられたので、それを伝えにきただけなのですが」 「あの男はアルスフェルトの件をくわしく知っていたのよ! もっと情報を引き出せたかもしれないのに」 「姫」 ユーグの口調が変わる。 「ヴェルンハルト殿下に向かって〝あの男〟とは何ごとですか。口を慎んでください」 「だって……」 ユーグの言い分は正しい。腹立たしいが今のところ反論のしようがなかった。 「まあ、いいわ。ところでユーグ、アルスフェルトを襲った翼人についていろいろとわかったわよ」 「ええ、聞いておりました」 「は?」 「ほとんど最初からお二方の後ろにおりましたので」 アーデはかちんと来た。 「だったら、どうしてもう少し話をさせなかったのよ!」 「立ち聞きして