目の前の光景はなんだろうか。 人間と人間とがぶつかり合い、剣を交え、盾で押し合い、火花を散らしている。その人間は、片方が賊でも暴徒でもない。正規兵同士が真剣に、しかもここ帝都で戦っていた。 その様子が、ここまで見る者に衝撃を与えるものだとは予想だにしなかった。しかし一方では、ついにこのときが来たのかと納得する面もあった。 片方は宮廷軍。 片方は聖堂騎士団。 この二者は古(いにしえ)よりずっと対立をつづけ、隙あらば互いを滅ぼさんといがみ合ってきた。 互いに譲れぬものがあり、互いに相容れぬものがある。結果として常に争いの気配をはらみ、常に敵意の炎はくすぶっていた。 それが表面化したことは、これまで幾度となくあった。中でも最もひどい事態になったのが、六十年前に起きた〝カイザースヴェークの争乱〟だ。 以前から両者がため込んでいた不満や怒りが頂点に達し、皇帝の宮廷軍と大神官の聖堂騎士団との戦いが勃発