晩春から初夏への移り変わりは早く、日差しは確実に夏のものに近づいていた。 空から容赦なく照りつける陽光が、今は恨めしかった。ヴァイクは手をかざし、目を細めて天を仰いだ。 まだ暑いというほどではない。しかし、やや体力を奪われてしまうのが厄介だった。 翼をたたんだまま大地を歩きつづけ、前方に見えてきた円錐形の天幕へ向かった。 一歩一歩がいやに重く感じられる。 今はもう、八方塞がりの状態だ。新部族が大人数を動員してくれているにもかかわらず、ジャンとベアトリーチェの消息どころか〝虹〟の断片的な情報さえ摑めない。 話によれば、新部族はノイシュタットだけでなく帝国各地に拠点があるとのことだった。それでも、現状どうにもならない。 焦りばかりがつのっていく状況の中、最後の望みをかけて〝老師〟ことアオクを尋ねることにしたのだった。 少し緊張しながら、天幕の前に立つ。意を決して名乗ろうとすると、先に内側から声
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