鎌倉時代の説話集。編者不詳。古写本・古活字本は二巻か、もしくはそれを更に四巻・八巻にわけてあるが、万治二年(一六五九)刊の流布本は十五巻。前者が本来の形であろう。建暦二年(一二一二)ころ成立の『古事談』から話を採っていることと、承元四年(一二一〇)―承久三年(一二二一)在位の順徳天皇を「当今」と書いていることなどから、そのころに成立したものとみられているが、多少の増補もあるらしい。雑纂形態で説話総数百九十七、その配列順序に諸本間の異同はない。『今昔物語集』と同文的な話が八十余あるのをはじめ、約百二十話において、諸書と同文的な伝承関係にある。ことに『古事談』『古本説話集』からは、同文的な話のグループを採りこんでおり、密接な伝承関係にあると推定されている。しかし、その他の約七十話のうちには、鬼のこぶとり、腰折雀などの昔話、くうすけの仏供養、空入水の僧の話のような世間話、随求陀羅尼を額に籠めた僧