こんなコピーを目にしたことはないだろうか。 『人間』らしくやりたいナ、『人間』なんだからナ これは1961年に開高健が作った、あまりにも有名なコピーである。 彼は「うまい、やすい」を代名詞とするトリスウィスキーを、この一行で押し上げた。 開高健。 名コピーライターであり編集者であり、芥川賞作家でもあり、そしてベトナム戦争取材で知られるジャーナリストでもあり、そして世界を駆け巡る旅人であり「怪魚ハンター」な釣師でもあった。 そのいくつもの顔で一流を極めた稀有な存在である彼の足跡を、活字で追うだけで胸ときめかせた者があの頃どれだけいたことか。 2020年はそんな開高健の生誕90年にあたる。 彼の軌跡を紐解くのに、こんな最適なタイミングはないだろう。昨年末に渋谷で行われた「ビギナーズKAIKO! 渋谷でまるごと開高健」でお披露目された知られざるエピソードなども交えて、改めて彼の多面性に迫ってみた