公平公正を旨とする公共放送としての資質が疑われる事態だ。 昨年末に放送されたドキュメンタリー番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」で、反対デモについて事実と異なる字幕が付けられた問題である。 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が「重大な放送倫理違反があった」とする意見書を公表した。 重大な倫理違反と認定されたのは、2007年の委員会発足以来5件目で、うち2件がNHKだ。 番組では、インタビューを受ける匿名の男性の映像に、「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」との字幕を付けて放送された。 しかし、男性が五輪反対デモに参加した事実はなく、字幕どおりの発言もなかった。取材の基本である事実確認を怠った。 男性が別のデモについて語っている内容を、編集作業を通じて五輪反対デモの発言にすり替えた。本来、事実関係をチェックすべき試写のたびに、