第二次世界大戦後の国際秩序を大きく揺るがしたロシアによるウクライナ侵攻は、10カ月を経てなお出口が見えない。 この間のロシアの蛮行は目に余る。市民を虐殺し、病院を爆撃し、原発を乗っ取り、都市インフラを破壊した。容赦ない無差別攻撃には人道主義のかけらもない。 国連安全保障理事会の常任理事国として規範を示すべき立場にあるにもかかわらず、国際法を破り、抗議の声を上げる国際社会の足並みを乱そうとしている。 被害は甚大だ。ウクライナ経済は急激に悪化し、国内総生産(GDP)の3分の1を失った。戦後復興費は1兆ユーロ(約140兆円)を超えるという。 世界を直撃したエネルギー価格の高騰とインフレにより、先進国では景気が減速し、一部の途上国は財政が底を突いた。格差は一段と広がっている。 出口見えない露の戦争 ロシアも痛手は免れない。欧米企業が撤退し経済は低迷する。戦闘の長期化で弾薬や装備が消耗し、兵士の訓練