これでは「喉元過ぎれば…」ではないか。 関西電力大飯原発(福井県)の再稼働が、きのう決まった。経過をたどると、まるで福島第1原発事故がなかったかのような錯覚にとらわれる。 原発事故で故郷や仕事を失ったままの人たちや、放射性物質の危険にさらされて暮らす人たちの視点は、どこにもうかがえない。地元のおおい町から福井県、そして国へと何事もなかったかのように淡々と手続きが進められた。 再稼働をめぐる一連の動きのポイントになったのは8日の野田佳彦首相の記者会見だった。だが、その内容は「福島のような事故は起きない」と意味もなく繰り返したにすぎない。 事故への何の反省も示さないまま、この期に及んでなお「安全神話」を振りまく。原発事故の影響は生易しいものではないし、一体いつまで続くのかも分からない。一国のリーダーとして、その重大性をどこまで理解しているのか甚だ疑問だった。 今、国民の前で原子力を語