単なる恋愛小説ではない。 大切な人をひたすら愛し続ける儚い者たちを描いた物語である。 ガラシャは、本能寺の変を企だてたことで有名な明智光秀の娘ある。そして、ガラシャという名前からも想像できるようにキリシタンである。 父、光秀が信長を討伐したせいで罪人の娘となり、幸せな生活が一変したにもかかわらず、ガラシャが父を愛する気持ちは色あせない。 また、そんな不幸なガラシャを懸命に支え、守り抜こうとするガラシャの侍女、糸。人は皆、自分がかわいいものだけど、糸はいつもガラシャの幸せだけを祈り、生きてゆく。 そして、ガラシャの舅、幽斎。 幽斎の明智光秀に対する熱く深い思い。友情という言葉では表しきれない人間愛。 一応は恋愛長編として謳われているので、ガラシャの恋心やガラシャの夫である細川忠興の狂った愛情なども描かれているが、印象に残ったのはむしろ色恋を超えた人間愛だった。 戦国の世の、いつも死と隣り合わ