アベノミクスが「円安」にした…? 8月28日、安倍総理は7年8か月という史上最長となる在任期間の末、健康問題を理由に辞意を表明した。本稿執筆時点では次期政権の全容がわかっていないため、今後の展望を語るタイミングとしてはふさわしくないと思う。一方で、すでに方々で論説が見られ始めているように、安倍政権の経済政策運営(以下アベノミクス)を総括するには最適のタイミングではないかと思われる。 総括すべき論点は多岐にわたるため、網羅するのは無理がある。だが、衆目の一致する論点として、リーマン・ショック以降で続いていた長く、厳しい「円高局面の反転」こそがその幕開けの象徴になったことは周知の通りだ。 恐らく、経済や金融に明るくない市井の人々にとってアベノミクスとは「大胆な金融緩和」であり、雑駁に言えば円安誘導と映ったはずである。アベノミクスが意識されるようになった2012年11月以降、ドル/円相場は最大で