本論文の目的は、主権国家とは異なる非主権的政治体の可能性を、20世紀初頭のイギリス多元的国家論と現代イギリスの多文化主義論の比較を通じて、探ることにある。また非主権的政治体との対比によって、主権国家の一側面を明らかにすることも試みる。フィッギスやラスキらによって主張された多元的国家論と、パレクらの論ずる現代の多文化主義論は、連邦的な政治体の構想を共有しており、それはcommunitas communitatumあるいはその英訳であるcommunity of communitiesという概念で表現されている。しかし、リベラルな個人主義を組み込んだ多文化主義論は、多元的国家論の提示した共同体の団体性という論点について十分に取り組んでいない。連邦的な政治体を実現するためには、平等論の観点からだけではなく、代表論や代表制度の観点からの取り組みが必要となる。イギリスの議会主権も、もともとはシャーやバ