講演する日銀の黒田東彦総裁=6日、東京都千代田区【時事通信社】 黒田東彦日銀総裁が物価高についての不用意な発言で厳しく批判され、撤回に追い込まれた。具体的には、6月6日の講演で「家計の値上げ許容度が高まっている」と述べた部分だ。ネット上では、家計の苦境を軽視する発言として批判が集中。7、8日に国会に呼ばれた黒田総裁は「適切な言い方でなかった」などと釈明。「誤解を招いた表現で申し訳ない」と陳謝し、発言を撤回した。日銀OBらが「前代未聞の失態」と口をそろえる失言が飛び出した背景を考察してみた。 (時事通信解説委員 窪園博俊) 「非の打ちどころない」はずなのに まず、黒田総裁の失言がなぜ「前代未聞」なのかを説明したい。一般的に失言は、記者会見や国会での質疑応答などで飛び出すものだ。金融政策運営を批判したい向きは、そもそも失言を誘うための質問を繰り出す。慣れないと質問者のペースに乗せられ、失言する