過去を失うということ無料低額宿泊所を利用する人の多くは、家や仕事そして家族とのつながりがなくなり、生活に困窮してしまった人たちです。 それぞれに、「過去」の経緯があり、それまでの生活が送れなくなってしまった。 しかし、今回のインタビューに登場するKさんには、その「過去」がありません。 2年前のある日、気がついたら公園にいた彼は、それまでの記憶を一切失っていたのです。 にわかには信じがたいでしょう。 ですが、警察の情報網や医療の力をもってしても、何も手がかりは得られませんでした。 「自分が誰かわからない」ということは、自分の存在を証明するものが何もないということ。 このコラムを読んでいる人の中には、もしかしたら 「過去をすべて消し去ってしまいたい」 「人とのつながりを断ち切ってしまいたい」 そう思っている人もいるかもしれません。 けれど、本当に「過去」を失ってしまったとしたら、 Kさんのよう