最近、頓に昔の出来事を思い出す事が多くなった。しかも20年以上も前の記憶ばかりだ。 それはまるで、何度も観た映画を再生するように、優しく、懐かしく、愛おしく、切なく、ほろ苦く、そして少々うんざりする。 二十代の終わり頃、勤務先の先輩達とバンドを組んだ。「酒を飲んで管を巻くばかりでは能が無い、何かもっとクリエイティブな事をしてみようではないか」、という発想からで、我々が夜な夜なたむろしていたスナックのマスターも加え、5人でスタートする事になった。バンド名は当然プロ・デビューを見据えて「MISTRAL(ミストラル)」。南仏プロヴァンス地方に吹く強い北西の季節風の名称だという。 ところがこの5人の内、バンド経験者は私とクラーク博士の子弟らしいハンカクサイ道産子だけで、キーボードのChuuさんはピアノを習ってはいたが楽譜が無ければ何も弾けず、無理やりベースを買わせたShun-chanは白玉(全音符