直木賞を受賞した『凍える牙』をはじめ、30年以上にわたって多くの小説を発表してきた乃南アサさん。 令和になったいま、乃南さんが改めて書き記した「家族」の在り方を書評家はどう読み解くのか? 今回はマライ・メントラインさんによる書評を公開します。 乃南アサ『マザー』 アニメのような三世代家族から独立して家庭を持った青年が、コロナ禍の間に立て続けに身内が亡くなった実家に久々に帰る「セメタリー」、過労によるうつ病で医師の仕事をやめて離婚した兄から、その身を案じながら亡くなった母の一周忌を前に再婚の知らせが届く「ワンピース」、娘が嫁いで一人残された高齢女性が、やがてマンション内で鞘当てが起きるほどに華やかに変貌していくさまを管理人の目から見た「アフェア」など、「母」という名に隠された一人の女性としての“本当”の姿を描き出す、直木賞作家渾身の家族小説! 厄介で気になりすぎる「母」 乃南アサの短篇集『マ