237 デジタルな複製技術が文化・社会に与える影響が論じられるようになって久し い。本ワークショップは, 「初音ミク」を代表とするボーカロイドを議論の素材 として,すでに古典とも言うべき位置にあるベンヤミンの複製技術論の現在的意 義を問い直すことをねらって企画された。 遠藤薫会員による問題提起は,近年刊行された自著『廃墟で歌う天使』を下敷 きとして,情報を (あえて) 〈モノ〉の再生産の観点によって捉える立場から提示 された。ポイントは,ベンヤミンのいう「アウラ」が「芸術作品のもつ〈いま- ここ〉的性質 それが存在する場所に,一回的に在るという性質」を指すがゆ えに,表象あるいは情報の刻印される〈モノ〉の物質性と内在的に関連せざるを えないだろうという点にある。たとえば2つの複製物があったとしても,それぞ れは〈モノ〉としては各々の場所と時間に, 〈いま-ここ〉において一回的に在る。 ベン