「昭和は遠くなりにけり」。日本経済団体連合会(経団連)の新会長に東レの榊原定征会長が内定したというニュースにこう感想をもらした経済人がいた。戦後、経済民主化のかけ声とともに財閥が解体され、心棒を失った経済界をまとめるために生まれた経団連はまさに「昭和の財界」だった。規制と分配権をもって企業をコントロールしようする政界、経済産業省に対し、会長の見識と器をもって大企業をまとめ、経済界として主張する。そうした機能も力ももはや経団連には残っていない。榊原経団連は組織としての財界活動の幕引きとなるだろう。 米倉弘昌会長(住友化学会長)率いる経団連の迷走ぶりは最後の会長人事で一段と際だった。意中の会長候補だった坂根正弘前コマツ会長、川村隆日立製作所会長の二人に断られた挙げ句、両人ともに自らの現役職から退くことを決断し、米倉会長の未練を断った。米倉氏には話しても無駄だから、行動で示そうというわけだ。