(福島 香織:ジャーナリスト) この原稿がJBpressにアップされるのは天安門事件30周年の6月4日が過ぎたあとだが、やはり天安門事件のことを書きたい。この事件は風化させてはいけない。習近平政権になってそう強く思うのは、ひょっとすると天安門事件は再び起きるのではないか、と危惧しているからだ。 天安門事件とは何か、いまさら説明する必要もないように思える一方で、これほど複雑な背景を持つ事件もあまりない。単純に学生が民主化を求め、中国共産党がそうした学生たちの運動を武力で蹂躙した、という構図だけでは十分に説明しきれない。経済状況の悪化、党内権力闘争、国際情勢の変化、海外からの干渉、そういったものが複合的に影響し、知識人・学生と一般市民・労働者らを同じ方向の運動に走らせていった。なぜあそこまで人々が恐れ知らずの熱狂に染まったのか。なぜ共産党はそれを戦車で踏みつぶすと決断してしまったのか。そのプロ