第2節 1 古代文明の盛衰の歴史 古代文明の盛衰と環境の関係については、必ずしも明確に分かっている訳ではなく、種々の見解が必ずしも一致する訳でもない。しかし、環境の変動が文明の成り立ちに影響を及ぼしてきたこと、文明の活動が環境に影響を及ぼしてきたこと、そして少なくともいくつかの文明において、文明自身が及ぼした影響による環境の変化が文明の滅亡の有力な原因となっていったと考えられている。 以下に、いくつかの過去の文明の事例を、これまでなされてきた内外の研究成果を踏まえたいくつかの文献に基づいて紹介し、その盛衰と環境との関係について考えてみよう。 (1) シュメール(メソポタミア)文明 シュメール文明は最古の文明の一つであり、メソポタミア南部で確認されている最初の集落跡は紀元前5300年頃に遡る。この文明はメソポタミア南部、チグリス河及びユーフラテス河流域の洪水多発地帯に成立していたものと考えら