ホテルのインターフォンが鳴った。ドアを開けた。こちらを睨んでいる、女の子が立っていた。その表情は同時に、睨みたくないのに睨んでしまっているという、やりきれない感じも伝えていた。黒髪ショートヘアで、瞳が大きく、化粧っ気のなさがどこか田舎臭さを感じさせる、いかにも池袋の風俗客が好きそうな雰囲気の女の子だった。彼女は『業界未経験』とホームページで謳われていた。 池袋には、女の子の素人っぽさを売りにする風俗店が幅を利かせている。素人店のメッカと言ってもいいだろう。業界未経験ではないのに『業界未経験』と紹介されている女の子なんていくらでもいる。2年ほど前に池袋の『未経験』というお店で業界未経験の女の子を指名した際には、「『未経験』で働いて3年目になります」という業界未経験の女の子が来たことだってあった。もはや「業界未経験」というワードは、セブンイレブンの「新発売」ほどの意味しかもたなくなっている。ま