菅義偉首相による日本学術会議会員の任命拒否問題に対し、撤回を求めるネット署名を中心となって呼びかけたのは、日本近現代史を研究する歴史家だった。戦前に学問や表現の自由を弾圧し、戦争に突き進んで破滅した国家の歴史を研究してきた立場から、見えてくるものは何か。日本大学教授の古川隆久さん(58)に聞いた。 ――菅首相に学術会議の会員候補6人の任命拒否撤回を求める署名は、10日間で14万3691筆が集まり、内閣府に提出されました。署名活動に取り組んだきっかけは、何だったのですか。 「拒否された6人に大学、大学院のゼミで2年上の加藤陽子・東京大学教授が含まれていたことがきっかけです。敬愛する加藤さんは実証的な歴史家で、福田康夫政権で公文書管理に関する有識者会議のメンバーも務めました。『そんな人がなぜ』と驚き、すぐに何かしなければと思いました。ネット署名活動の経験がある同僚にアドバイスしてもらい、私と同