独演会「体験過多、お前もか」の開演直前。芸歴20年目の漫談師・街裏ぴんくさん(38)は、幕の下りた舞台を落ち着きなく歩き回っていた。独演会は16回目。「自分の成長具合を測る絶好の機会。(前より)上にいっていないと」。ただならぬ緊張感をまとう。マイクの前に立ち止まった。深々と頭を下げる。幕は静かに上がった。 街裏さんが舞台で見せるのは独特な「ウソ漫談」だ。実際にはなかったことを、まるで本当のことのようにすらすらと話す。ウソが絶妙なリアル感をもつ展開に没頭していき、オチで、はっと夢から目が覚めるようだ。そして、街裏さんにも、さっきまで笑っていた自分にも、置き去りにされたようになる。もう一度内容を頭でたどろうとしてもできない。そこもまるで夢のよう。その感覚を何度も味わいたくなるファンタジックなものだ。 そんな「ウソ漫談」がどのように生み出されるのか不思議でたまらない。街裏さんに疑問をぶつけた。