今、書店の店内を巡ると、「電子書籍」をタイトルに戴いたものが、ほとんど面陳列されていないことに気づく。それは、電子書籍を主題とした新刊・話題書がほとんど出ていないということだ。1年前は、雑誌、話題書、ビジネス書、PC書、新書とさまざまなジャンルで、「電子書籍」の文字が躍っていた……。 「電子書籍」騒動が、かくも沈静化したのはなぜか? 理由の第一は、IT企業にとって、そもそも、「電子書籍」は目的ではなく、手段であったことだと思う。当面の目的は、端末機器の販売であった。アマゾンが当初、赤字覚悟の破格の安値で「電子書籍」を提供したのは、キンドルの販売によって十分元が取れる上、以後の戦略を優位に進めることができるからである。アップルは、即座にiPadでそれに対抗した。 彼らの最終的な目的は、「プラットフォーム覇権」を握ることである。すなわち、ユーザーが自らのプラットフォーム上でさまざまなIT