言うまでもなく、「山月記」というと中島敦の作品の中で最も有名な作品である。 中島敦 山月記 戦前の小説には漢籍をアレンジしたものが多く、これも「人虎伝」という作品のアレンジなのだが、国語の教科書で取り上げられているからみんな知っている。 『人虎伝』まとめ | フロンティア古典教室 実際の所、国語の教科書の内でどれくらいのものが「山月記」を取り上げているのかは知らないが、世間の「山月記」に対する反応を見ると、おそらく大抵の教科書に載っているのだろう。 そして、「山月記」の内容の方も、それなりに好評をもって国民に受け入れられているのではないだろうか。 しかし、僕は、「山月記」が文学作品として本当に優れているのかについてかなりの疑問を持っている。 とりあえず、「山月記」の前半部分は文句なしに素晴らしい。 美しい文章が澱むことなく、するすると流れる。 膨大な情報が一切の無駄なく、しかもいささかの不