言葉ってやっぱり世界を変えるなぁ、と実感させられた子どもとのエピソードについて書く。 気持ちのいい天気だったので園外に散歩に出かけてみると、近所で飼われている白い大きな犬がすっかり気を緩めて昼寝している。T君は部屋で遊んでいるときよく犬や猫の本を眺めているし、動物が大好きだということをお母さまからも聞いていた。 「T君、大きい犬がいる、見てごらんよ」 と、T君の手を引こうとすると、それまでその場所から動かずに立っていたT君がふいに、 「こわい!」 と口にした。 はじめ、誰が「こわい!」と言ったのか分からなかった。ついで、どう考えてもT君の言葉であると気づいて喜びがあふれた。 T君は、1歳児クラスの中では月齢が高いほうで体も大きいのだけど、それまで、保育園だけでなく家庭でも言葉が出てきていなかった。そのことをお母さまはずっと心配なさっていたのだった。 T君が発したのは「こわい」というただ一言