Harrison, P., Adam Smith and the history of the invisible hand. in : Journal of the History of Ideas, 2001, 72 1: 29-49. 哲学史上、スミスの「見えざる手」(invisible hand)ほど人口に膾炙した言葉も珍しいと思います。しかし、この表現は元々どこに由来して、また、当時の人々にはどう読まれていたか(あるいは、スミス自身はどう考えていたか)、ということはあまり考えられていません。 スミスの著作には「見えざる手」という言葉が、都合三回出てきます。最初は『天文学講義』の「ジュピターの見えざる手」、次に『道徳感情論』における「地主の自己愛」の話、そして有名な『国富論』における「個人の利益追求が結果的に公共の福祉につながる」という箇所ですね(ちなみに誤解されがちですが、スミス