正月の定番として知られるおせち料理。重箱に色とりどりの具材が詰め込まれているさまは、見ているだけでも楽しい。だが、現在正式とされているおせち料理は古くから続いてきたものかというと、実はそうでもないようだ。おせち料理に関する論考がある民俗学者の山田慎也教授(国立歴史民俗博物館)におせち料理の形成と変遷について話を聞いた。 (取材・大西健太郎) 多種多様な具材が詰まった現代のおせち料理(画像は紀文食品提供) 宮中から庶民へ そもそも、おせち料理の「おせち」は「御節供」という言葉に由来する。御節供とは奈良時代に中国から伝来した、1年の節目ごとに行われた宮中行事とその際に供された料理のことを指す。山田教授によると、当時の御節供と現代のおせち料理とでは、その内容が大きく異なっているという。当時は重箱に詰められてはおらず、単に皿に盛られていたようだ。「我々がイメージするおせち料理の形態が形作られていっ