ひと言で言って、『エヴァ』という作品は、まるで明治期の自然主義文学の如き私小説的内実を、メタフィクションから脱構築まで、なんでもありの形式で成立させた奇怪な複合物であります。 キャラクターの周辺に関してはパンツ降ろしっぱなしで、監督である庵野の現実のまんま。 島崎藤村か田山花袋もかくやのダダ漏れ状態です。 一方で表現や文体はと見れば、異化効果どころかラフ原レイアウトもあり、セルまでひっくり返す徹底ぶりで、正直言って劇場でみたときは仰天しました。 ワタシでもここまではヤらなかった。 「庵野はけっしてバカではない」どころか、その表現に関する自己批評のありようから察するに、アニメという表現形式への自意識の持ちようは、これは見事なものだと感心した記憶があります。 その一方で、物語に関してはまるで無頓着。まさにステロタイプのオンパレードで、いつかどこかで見たもののコピーの連発。 キャラクターが口にす