「軍事研究はやってはいけない」という雰囲気 武士とその歴史を見るとき、やはり考えなければならないのは軍事であり、軍事史なのだと思いますが、実際には戦後、日本の歴史研究というのは政治を中心とした政治史のかたちで進められてきました。そこには、軍事史をある種のタブー扱いする傾向があったことが見て取れます。 その大きな理由としては、やはり、日本においては、太平洋戦争の敗戦が大きかったのだろうと思います。太平洋戦争の死者は300万人以上と言われています。そのような惨事を引き起こした戦争を忌避する気持ちとそれに対する批判から、戦後になって多くの大学では「軍事研究はやってはいけない」という雰囲気が漂っていたのです。 それでは逆に昭和の戦前・戦中においては軍事史研究というものがきちんとなされてきたのかというと、それ自体、満足には行われていなかったと思います。その理由として、歴史学においては戦前・戦中におい