楽園への道 (河出文庫) 作者:マリオ・バルガス=リョサ 河出書房新社 Amazon この世で一番小説が上手いんじゃないか。バルガス=リョサの作品を読むたびに、そう思わされてしまう。とんでもない馬力と、繊細な詩情と、それを表現する筆力がひとりの人間に宿っている奇跡じみた存在——それがバルガス=リョサなのだ。 池澤版・世界文学全集に収録された本作でも、その力は遺憾なく発揮されている。物語は二人の人物の行動が、章ごとに切り替わって順々に描かれていく。ひとりは高名な画家ポール・ゴーギャン。そしてもうひとりは、十九世紀初頭に活躍した女性解放運動と労働組合活動の指導者、フローラ・トリスタン。一見関係がないように見え、描かれる時代も異なるこの二者だが、なぜこのふたりではならなかったのかが、本書を読むにつれて浮かび上がってくる。 まず第一に、二人は題にある通り、「楽園」の追求者であったことだ。結婚、離婚