結構前に読んだんだけど、なかなかうまくレビューがまとまらなかった。 「ハーモニー」で気になったのは読後感のどうしようもなさだった(注:ほめてます)。カタルシスもない、不毛ですらない。自分の周囲で変わっていく世界をなすすべもなく眺めている。 とはいえ、訳分からないものを書いているわけでもない。少なくともラストまでは、冥界下りものの展開を忠実になぞっている。なのに読後感が全然違う。すさまじい勢いで読者を突き放している。例のタグは、本を介して立ち上がる読み手としての「わたし」をも否定している。話のラストで生まれるのはゲシュタルト化した人類で、別に珍しいものでもない。でも何かが決定的に違う。 視点を変えて考えてみた。人類はすでに身体的にはゲシュタルト化しているのだろう。物理的な個の多様性に意味はなくなり、群体として一つの個を形成している。意識についてよく言われる論として、意識は身体性であり身体中に