たいていの人や状況に対して執着がきわめて少ないのが自分のいいところだと彼女は思っていた。仲良くなる相手はだからちょっとラッキィだねと、そう思っていた。適度に親しげに、感じよくふるまうことについて彼女には自信があったし、彼もそれを享受しているように思われた。 彼女はうるさいことを言わなかったし、先の話はすべて淡い願望あるいは彼女に対する無責任なサービスとしてとらえた。突然の来訪はなんでもない顔で受け入れるか、なんでもないことのように断るか、した。しばらく連絡が途絶えてもとくになにもせず、ふたたび連絡があると、当然のように返信を出した。彼ってちょっと変わった人なんだな、と彼女は思った。なんか急にいっぱい会いたがったり、いなくなったりするんだな。そう思った。 彼は彼女が彼のなにかを好きだと言うのが好きだった。そして好きなのはそれだけではないと言うのを待っていた。そのせりふを選ぶしかない場面に追い