ここ数年「真逆(まぎゃく)」という奇妙な言葉を見聞きするようになった。この背景には、とにかく漢字表記を廃せ、平仮名書きせよ、という国語平易化改革の文化圧力があると思われる。その結果、「真逆(まさか)」という漢字表記は廃絶されたものの「真逆(まぎゃく)」という奇妙な漢字語が出現した。平易化イデオロギーは、期待とは正反対の漢字表記の混乱という結果をもたらしたのだ。 先日、真逆(まさか)と思う例に出くわした。岩波文化を論じたある本が文庫化されたが、その解説文中に「文系学生と理系学生の特徴が日本と欧米とでは真逆様(まぎゃくよう)になっている」とあった。わざわざルビまでふってある。これじゃあ、せっかくの名著も無教養の奈落に真逆様(まっさかさま)である。この解説者は、教養の没落についての好著を何冊も著している。真逆(まさか)この学者の文章にこんな言葉が出てくるとは思わなかった。 言葉の乱れは、誰でも口