ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (61)

  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、サイボーグになることを選んだ男──『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン: 究極の自由を得る未来』 - 基本読書

    NEO HUMAN ネオ・ヒューマン―究極の自由を得る未来 作者:ピーター・スコット・モーガン東洋経済新報社Amazon ALSという病 筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気がある。体が徐々に動かなくなっていき、最終的には自発的な呼吸も行うことができず、意識は明瞭で、感覚も残ったままにも関わらず、目以外(こちはも最後まで残るだけで弱まっていくようだ)のすべてが動かせなくなってしまう病気で、現在治療法は皆無である。進行もはやく、人工呼吸器なしでは余命は3〜5年ほど。日ではさまざまな理由から、約7割の人が人工呼吸器をつけずに亡くなるという。 現在の日では、一度人工呼吸器をつけたら、たとえ死にたいと思ってもそれを意図的に外すことは難しい。2020年には、ALSの女性の依頼によって医師2名が薬物を投与し死に至らしめた事件も話題になった。ニャンちゅうの声優である津久井教生さんの連載を読んだこと

    筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、サイボーグになることを選んだ男──『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン: 究極の自由を得る未来』 - 基本読書
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    septhika 2021/06/30
  • オランダ史上最悪の犯罪者と呼ばれた兄を告発した妹による、壮絶なる体験記──『裏切り者』 - 基本読書

    裏切り者 作者:アストリッド ホーレーダー早川書房Amazon書『裏切り者』は、映画にもなった「ハイネケンCEO誘拐事件」の実行犯として知られ、その後も犯罪を重ね「オランダ史上最悪の犯罪者」と恐れられるまでになった男ウィレム・ホーレーダーについて書かれた犯罪ノンフィクション/体験記である。 現在ウィレムは逮捕され、終身刑をらっているのだが、彼の罪を告発し終身刑にまで追い込んだのは実の妹で、書の著者であるアストリッド・ホーレーダーなのだ。書は著者が幼少期を過ごした1970年代から、ホーレーダー家がどのような家庭環境だったのか。また、著名な犯罪者の実の妹として日々を過ごすとはどういうことなのか。兄を告発すると決めた決定的な理由、そして告発を決めた後の戦いが、まるでスパイ小説映画のような緊迫感の中で描かれていくことになる。 とはいえ、実の妹なんだから信頼されているだろうし、別に告発もそ

    オランダ史上最悪の犯罪者と呼ばれた兄を告発した妹による、壮絶なる体験記──『裏切り者』 - 基本読書
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    septhika 2021/06/30
  • 『1つの定理を証明する99の方法』から『怒りの人類史』まで、最近読んでおもしろかったけれどブログで単独記事にできなかった本をまとめて紹介する

    最近もいろいろ読んでいるけれど、紹介したいけどうまい感じの切り口が思いつかなかったり、おもしろいけど様々な理由で取り上げにくいがたまってきたのでいったんそいつらを紹介してみようと思う。普段ブログには小説でもノンフィクションでも、5〜6冊読んで1冊取り上げるかどうかの割合になので、このブログの背景にはこれぐらいのが存在しているんだな、というのもなんとなく感じてもらえれば。 科学探偵 シャーロック・ホームズ 作者:J オブライエン発売日: 2021/01/21メディア: 単行最初に紹介したいのは、J・オブライエン 『科学探偵 シャーロック・ホームズ』。シャーロック・ホームズは初めての科学探偵という側面も持つ。ホームズの捜査における科学的な側面とはどこにあったのか、化け学の知識はどれぐらいあったのかを原典のエピソードに細かくあたりながら見ていくで、けっこうおもしろい。 たとえばホームズが

    『1つの定理を証明する99の方法』から『怒りの人類史』まで、最近読んでおもしろかったけれどブログで単独記事にできなかった本をまとめて紹介する
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    septhika 2021/02/25
  • 家を見る目と意識を一変させてくれる、素晴らしいサイエンスノンフィクション──『家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている』 - 基本読書

    家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている 作者:ロブ・ダン発売日: 2021/02/19メディア: 単行家には時折ゴキブリやクモなどの外部の生物が紛れ込んでくることがあるとはいえ、そうそういつも見かけるものではない。大抵の場合、家には自分とその家族しかいないように見える。だが、実際には家はそれ自体が一つの生態系といえるぐらいに大量の生物、細菌、微生物の巣になっている。それどころか、我々の身体はそうした身近な細菌たちの存在なしには立ち行かない存在なのだ──と、身近な生物の多様さとその意味に目を向けていくのが、書『家は生態系』である。 僕も様々なサイエンス・ノンフィクションを読んでいくうちに、家や自分の身体がさまざまな細菌と微生物たちで溢れていることそれ自体はよく知っているつもりであったが、ここまでとは思わなかった。単純に数が多いだけでなく、希少性が高く他で見つからなかった種や、

    家を見る目と意識を一変させてくれる、素晴らしいサイエンスノンフィクション──『家は生態系―あなたは20万種の生き物と暮らしている』 - 基本読書
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    septhika 2021/02/25
  • サイバーパンクのすべてが内包されているかのような傑作──『サイバーパンク2077』 - 基本読書

    【PS4】サイバーパンク2077 発売日: 2020/12/10メディア: Video Game『サイバーパンク2077』が発売された。もう何年待ったことか。幾度もの延期を繰り返し、ようやくマスターアップしたかと思いきやまさかのそこから再度の延期を繰り返し、と出る前から話題沸騰。そしていざ出てからも、バグがあまりに多すぎてドタバタの返金受付、PS Storeからの削除と悪い意味で話題がたえない。 めちゃくちゃな注目度 だがそれだけの話題が巻き起こるのも事前注目の高さ故。開発会社のCD PROJEKT REDのウィッチャーシリーズは世界累計販売数が5000万という異次元の売れ方をし、このサイバーパンクについても事前予約だけで800万の売上を誇る(デジタル74%、物理26%)。その期待はただごとではないし、ここまで世界のゲーマーが盛り上がる自体がこれから先あるのだろうかというレベルで盛り

    サイバーパンクのすべてが内包されているかのような傑作──『サイバーパンク2077』 - 基本読書
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    septhika 2020/12/25
  • 様々な宇宙の形、時空の形を知ることができる格好の時間入門──『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』 - 基本読書

    時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて (ブルーバックス) 作者:高水裕一発売日: 2020/07/20メディア: Kindle版時間は逆戻りするのか。普通に生きていると時間は一定の方角に向かって流れていくので逆戻りなどするような感じはしないが、実は物理法則上は時間が逆戻りする可能性は存在する。昨年日でも『時間は存在しない』で話題をかっさらったループ量子重力理論の提唱者カルロ・ロヴェッリは「そもそもね、時間なんて存在しないよ」といったり、同2019年には、量子コンピュータを用いた実験でロシアアメリカ・スイスの共同チームが「時間が逆転する現象」をとらえることに成功した。 www.nature.com 少なくともミクロの世界では時間逆転が認められるのである。じゃあ、我々は過去に戻ることができるんですか!? といえば、そう簡単でわかりやすい話ではない。そんな感じで、時間にまつ

    様々な宇宙の形、時空の形を知ることができる格好の時間入門──『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』 - 基本読書
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    septhika 2020/07/29
  • 二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書

    マーダーボット・ダイアリー 上 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫マーダーボット・ダイアリー 下 (創元SF文庫) 作者:マーサ・ウェルズ出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2019/12/11メディア: 文庫この『マーダーボット・ダイアリー』はマーサ・ウェルズのSFアクション連作中篇集である。上下それぞれに二篇の中篇が収められていて、特に上巻の「システムの危殆」はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞の各ノヴェラ部門を授賞。続く「人工的なあり方」もヒューゴー賞、ネビュラ賞を授賞と(賞的な意味で)評価の高い作品。 それにこの創元文庫版は安倍吉俊のイラストもあいまって刊行がたいへん待ち遠しかったんだけれども、読んでみたらこれが期待通りのおもしろさ! 全篇通して自分のことを一人称で「弊機」を呼ぶ人型警備ユニット

    二年連続でヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した、自省的な人型殺人警備ユニットの日常録──『マーダーボット・ダイアリー』 - 基本読書
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    septhika 2019/12/17
    ヒューゴー賞と聞いたら黙ってられないな。
  • すべての車が自動運転車になった時、社会の形は激変している──『ドライバーレスの衝撃—自動運転車が社会を支配する』 - 基本読書

    ドライバーレスの衝撃—自動運転車が社会を支配する 作者:サミュエル・I・シュウォルツ出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/12/07メディア: 単行この『ドライバーレスの衝撃』は、日々その支配を増しつつある自動運転車について語られた一冊である。自動運転車といっても、今まで人間が運転していた車が一部自動運転に変わるだけで、社会なんて変わらないでしょう、ましてや支配とは、と思うかもしれないが、書を読めばその意味するところはすぐ理解できるだろう。 実際、車の多くが自動運転者に置き換わっていく過程で、道路の形がかわり、人々の生活がかわり、文化もかわると想定され、さらにはその選択いかんによっては人命が失われたり環境破壊がより進展したりといった悪影響も想定されるのである。たとえば、米国の全雇用の七分の一が輸送に関わっているというが、もし仮にこれがすべて自動運転車に置き換わったら、その分の雇

    すべての車が自動運転車になった時、社会の形は激変している──『ドライバーレスの衝撃—自動運転車が社会を支配する』 - 基本読書
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    septhika 2019/12/17
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  • 今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書

    息吹 作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/12/04メディア: 単行ついにテッド・チャン最新短篇集『息吹』が刊行された! テッド・チャンは映画『メッセージ』の原作が含まれているSF短篇集『あなたの人生の物語』の著者として知られるが、その圧倒的な質の高さと反比例するかのように寡作で、これが17年ぶりの作品*1である。だが、それだけ待っただけのことはある圧巻の作品集だ。 現在までの29年のキャリアの中で出したのは短篇集二作のみなのだから、まさに寡作の王といってもいい貫禄ではあるが、(それだけの時間をかけたから、といっていいのかどうかはともかく)テッド・チャンが描き出す世界はとてつもなく緻密で、ありえないほど美しい。この短篇集も、SFを読む喜びに満ちていて、このような作品に出会うために小説を読んでいるのだ、と改めて実感させてくれる傑作揃いである。 テッド・チャン

    今世紀最高のSF短篇集といっても過言ではない、テッド・チャン最新作──『息吹』 - 基本読書
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    septhika 2019/12/06
    おおおお!まじか絶対読む絶対読む。Kindleと書籍両方買う。
  • 早川書房のSFコンテストを受賞した二作(ハードSFの期待の新星『オーラリメイカー』、描写で魅せる重厚なSFファンタジィ『天象の檻』)を同時に紹介する。 - 基本読書

    オーラリメイカー 作者: 春暮康一,rias出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る天象の檻 作者: 葉月十夏,長乃出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/11/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る春暮康一『オーラリメイカー』は第七回SFコンテストの優秀賞、葉月十夏『天象の檻』は同じく第七回の特別賞ということで、どちらも今一番新しいSFコンテストからの刊行作になっている。このSFコンテストは2012年に一度仕切り直された形で始まった賞なのだけれども、全7回のうち今回も含めて3回が大賞が出ていない(特に第4回以降は大賞が出たのは、第5回の『コルヌトピア』『構造素子』のみ)。 というわけで、この数回の実績だけみると大賞が取りづらい賞ともいえるのだけど、そのかわりこうして芽のある作品はちゃんと刊行されるともいえる。

    早川書房のSFコンテストを受賞した二作(ハードSFの期待の新星『オーラリメイカー』、描写で魅せる重厚なSFファンタジィ『天象の檻』)を同時に紹介する。 - 基本読書
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    septhika 2019/11/25
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  • 生態系を救うため、様々な過去を持つアウトサイダーらが結集する、パワーズ最新作──『オーバーストーリー』 - 基本読書

    オーバーストーリー 作者: リチャードパワーズ,Richard Powers,木原善彦出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/10/30メディア: 単行この商品を含むブログを見るこの『オーバーストーリー』はリチャード・パワーズの新刊である。『舞踏会へ向かう三人の農夫』や『われらが歌う時』、『幸福の遺伝子』に『オルフェオ』とどれもこれも年間ベスト級の傑作ばかり書くパワーズの新刊とくればそりゃあ買わないわけがないわけなのだけれども、何といっても今作はまず装丁が凄まじくかっこいい! 作は一言でいえば木とそれに関係する人間、人類の物語なのだけれども、それを繁栄して力強く巨大な木が表紙に鎮座している! 加えて邦訳書らしからぬ英題が邦題よりもデカく、金ピカのロゴで入っているのがめちゃ映える。書影が存在しないときから予約していたので、手元に届いた時あまりにも美しくてびっくりしてしまった。Kin

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    septhika 2019/11/14
  • 能力者たちが跳梁跋扈するアジア都市を舞台にした、世界幻想文学大賞受賞のSFマフィア物──『翡翠城市』 - 基本読書

    翡翠城市(ひすいじょうし) (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5045) 作者: フォンダリー,大谷真弓出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/10/17メディア: 新書この商品を含むブログを見るこの『翡翠城市』は、少ない作品数ながらも軒並み評価の高いフォンダ・リーによる、SFアジアンノワールとでもいうべき独特な雰囲気・舞台設定を持った作品である。巷では「二十一世紀版ゴッドファーザー✕魔術」と評判らしい(凄い評判だな)。 台湾のようなアジア的雰囲気を持つ架空の島を舞台に、マフィア/ギャング物をやる──だけではなく、さらにはそこに「翡翠」と呼ばれる身にまとうことで特別な能力を発揮できる特別な天然資源があって、対立する二大組織の戦闘員は翡翠を身にまとってまるでカンフー映画のように殺し合い──、と西洋と東洋が入り混じったような世界観を作り上げている。で、おもしろいかどうかだが──能力✕マフ

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    septhika 2019/10/24
  • 技術がもたらした価値観の変容が事件へと密接に関わってくるSFミステリ短篇集──『ベーシックインカム』 - 基本読書

    ベーシックインカム 作者: 井上真偽出版社/メーカー: 集英社発売日: 2019/10/04メディア: 単行この商品を含むブログを見るベーシックインカムと言うと、普通は全国民に一律3万なり10万なりといった一定額を定期的に振り込み続ける、最低給付保障をさす言葉である。僕もつい先日これについての記事を書いたばかりだが、記事で取り扱う『ベーシックインカム』は、森博嗣、西尾維新、清涼院流水ラインの最先端ミステリ『その可能性はすでに考えた』などで知られる井上真偽の最新作にして、SFミステリ連作短篇集である。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp 僕もこの作品は圧倒的なキャラの強さ、推理における演出のトンデモさとそれを支えるロジックの鮮やかさで大いに楽しませてもらった。そうはいっても、SFミステリはどうじゃろか……と思いながら読んだけれども、これがきちんとおもしろい。短篇はど

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    septhika 2019/10/24
  • 科学的で現代的な「人を動かす」──『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』 - 基本読書

    事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者: ターリシャーロット,上原直子出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2019/08/11メディア: 単行この商品を含むブログを見る事実では人の行動は変わらないという。議論をしたときに「これこれこういう事実がある」という主張をしても相手の意見が変えられなかった、ということは多かれ少なかれみな体験しているものではないだろうか。たとえば、アメリカではワクチンを摂取することで知的障害などが発生するリスクがあるというデマが拡散して、そのせいで百日咳やおたふく風邪が今更蔓延するというアホくさい状況が発生している。 ワクチンによって知的障害リスクが上がるのは完全にデマなので、科学的な事実の啓蒙を行えばいいでしょ、と思うかもしれないが、実はこれには全然効果がないのである。ある実験では反ワクチン思想を持つ親を集め、麻疹にかかった子どもの痛まし

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    septhika 2019/10/16
  • BIを導入したら本当に人は働かなくなるのか?──『みんなにお金を配ったら──ベーシックインカムは世界でどう議論されているか?』 - 基本読書

    みんなにお金を配ったらー―ベーシックインカムは世界でどう議論されているか? 作者: アニー・ローリー,上原裕美子出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2019/10/11メディア: 単行この商品を含むブログを見るベーシックインカムという、最低限所得保障の考え方がこの世に存在する。簡単に説明すれば、一月3万なり10万なりを、制限をつけず全国民に配布しちゃいましょう、という考え方である。「え、毎月10万貰えたらメッチャ嬉しい、やったー!」と気分が沸いてくるが、実際には利点に関しても欠点に関しても様々な議論がある。 BIの想定される利点と欠点 たとえば、そもそも財源をどうするんだ、という問題がある。また、全国民に配分するということは、金持ちにも同様に配るわけなので、貧困者を狙い撃ちにしたほうがもっと効果的なんじゃない? 説もある。他にも、毎月10万も(仮に)もらえたとしたら、人々は働かなくな

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    septhika 2019/10/16
  • すべての関係性を精算し、孤独に落ち沈んでいく個人主義の極地のような男を描くウエルベック最新作──『セロトニン』 - 基本読書

    セロトニン 作者: ミシェル・ウエルベック,関口涼子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2019/09/26メディア: 単行この商品を含むブログを見るこの『セロトニン』は、フランスの代表的作家ミシェル・ウエルベックの2019年に刊行されたばかりの最新作の邦訳である。僕はウエルベックについては、毎回とてもおもしろいと思いながら作品を読むのと同時にどこか好きになれない作家でもあったのだけれども、この『セロトニン』はなんだかとてもしっくりきた。ウエルベックの中でもっとも好きな作品をあげろ、と言われたら作を挙げることになると思う。 端的に書の物語について述べるなら、退廃の一途をたどる男の物語、ということになるだろう。46歳、男、名前はフロラン=クロード・ラブルスト。女性経験は豊富で、幾度ものセックスを超えてきている。とはいえ配偶者はなく、子どももいない。資産はある程度はあるが、仕事には

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    septhika 2019/10/11
  • 我々は、いかにして生まれたのか──『我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの』 - 基本読書

    我々は生命を創れるのか 合成生物学が生みだしつつあるもの (ブルーバックス) 作者: 藤崎慎吾出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/08/22メディア: 新書この商品を含むブログを見る作は、小説や科学系のノンフィクション作家である藤崎慎吾さんが講談社ブルーバックスのウェブサイトで連載していた「生命1.0への道」の書籍化したものになる。改題後の書名の通りに、「生命を創れるのか」を問い、各研究者らへのインタビューと仮説・手法の紹介が中心になっていくわけだが、生命を創るためには必然的に「我々は、いかにして生まれたのか」を欠かすことができないから、書では、「我々はどこで、どうやって生まれたのか」も必然的に追っていくことになる。 地球の生命はどこで生まれたのか問題 地球の生命は、どこで、どうやって生まれたのか。とりあえず海なのは確かじゃろ、で、熱噴出孔みたいなところでボコボコしてるところ

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    septhika 2019/09/03
  • 全篇詩のように短い文体で綴られた、復讐と暴力の連鎖──『エレベーター』 - 基本読書

    エレベーター 作者: ジェイソン・レナルズ,青木千鶴出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/08/20メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る全篇詩のような短い文体で綴られていく、復讐と暴力の連鎖を描く物語だ。一ページに十数行、場合によっては一行や二行、常に最大限の効果を発揮するように文字が配置されており、文章のビートにのって途切れずに読み進めると、復讐心と悲しみの詰まったカオス的な感情へと深くシンクロしていくことになる。全篇詩のような文体と書いたが、実際には極限まで切り詰められた詩の入り口に立っているような小説の文体であり、すべてが象徴的に機能するように綿密に設計されているのが素晴らしい。 あらすじとか紹介する 主人公は、銃撃で兄を突然殺された黒人の少年ウィル。彼の属するコミュニティには3つの掟があった。ひとつ、『泣くな。何があろうと、けっして泣いてはならない

    全篇詩のように短い文体で綴られた、復讐と暴力の連鎖──『エレベーター』 - 基本読書
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    septhika 2019/08/22
  • いかにしてNETFLIXは今のような企業になったのか?──『NETFLIX コンテンツ帝国の野望―GAFAを超える最強IT企業―』 - 基本読書

    NETFLIX コンテンツ帝国の野望 :GAFAを超える最強IT企業 作者: ジーナ・キーティング,牧野洋出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2019/06/26メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る何年か前から、Neftlixに加入し続けている。観たいアニメが配信されているし、映画もぱんぱか追加されるし、特にこの1〜2年のことだがオリジナルの映像コンテンツが豊富で、ちと時間が余ったし、なんかみるかな、という時に観るものに困らない。フィクションだけでなくドキュメンタリー系のものが配信され/オリジナルのコンテンツを作ってくれているのもありがたく、値段が上がっても毎月課金し続けている。 日からみていると、Neftlixは洗練されたアルゴリズムと品揃え、絶え間なく投入されるアホみたいに金のかかったオリジナル番組たちに支えられ、映像配信世界の王といった感じの企業である。がし

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    septhika 2019/06/28
  • 現実とは何かが不明確になった社会を描く、森博嗣によるSF新シリーズ開幕篇──『それでもデミアンは一人なのか?』 - 基本読書

    それでもデミアンは一人なのか? Still Does Demian Have Only One Brain? (講談社タイガ) 作者: 森博嗣出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/06/21メディア: 文庫この商品を含むブログを見る森博嗣によって講談社タイガで刊行されていた、人間の生殖行為による子どもがほとんど生まれなくなった社会を描き出すWシリーズが昨年完結したばかりだが、その事実上の続篇となるシリーズがこの『それでもデミアンは一人なのか?』から始まるWWシリーズである。とはいえ、1作完結路線は作でも変わらず、基的な人間関係、用語などは書でもその都度説明されるので、ここから読み始めてもそう問題ないだろう。前作と合わせて、森作品の中では明確にSFを指向したシリーズだ。 WWシリーズはどこをみているのか WシリーズとWWシリーズのSFとしての醍醐味 あらすじ的な 百年シリーズと

    現実とは何かが不明確になった社会を描く、森博嗣によるSF新シリーズ開幕篇──『それでもデミアンは一人なのか?』 - 基本読書
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    septhika 2019/06/25