2012年5月24日のブックマーク (1件)

  • 物語に陶酔する/『廃市・飛ぶ男』福永武彦 - 古本屋の覚え書き

    ・物語に陶酔する ・『中島敦』中島敦 ・必読書 その一 物語に陶酔する。福永が作るのはストーリーの建築物である。登場人物は影絵のようなものだ。結構がシルエットを際立たせることで、登場人物は普遍性を帯びる。 絢爛なタペストリーを思わせる短篇集である。『鳥 デュ・モーリア傑作集』に匹敵する作品といってよい。作風も似ている。読み比べてみるのも一興であろう。 デュ・モーリアの「モンテ・ヴェリタ」に対し、福永の「未来都市」と「飛ぶ男」は同じ光を放っている。まるで宝石のように。SF的手法で宗教的な世界を描き出しているのも同じだ。 ――しかし動機なんて、何の役にも立ちませんよ。現代は死ぬための動機に充満しているんです。そういう時代なんです。問題は、生きるための動機を見つけ出すことで、死ぬための動機じゃありません。 ――生きるための動機なんかあるものか、と最初の男が怒鳴った。我々は生きているんじゃない、生

    物語に陶酔する/『廃市・飛ぶ男』福永武彦 - 古本屋の覚え書き
    sessendo
    sessendo 2012/05/24
    エレヴェーターと共に烈しく落下する。撃たれた鳥のように、隕石のように。その二つとも彼だ。彼の意識は二つに分れ、その距離が見る見るうちに遠ざかる。垂直に。(「飛ぶ男」福永武彦)