結論から書きますね。それは、近年に稀に見る「ベタなストーリー」だからです。勿論これは批判ではありません。ベタというと、何かお決まりの定型のストーリーでお約束のクリシェの集合体のような物語を想像するかもしれませんが、今書いた「ベタ」とは「メタ」との対義として使っています。そしてこの15年ほど、アニメに限らず物語世界において勢力が強かったのは、明らかにメタの物語の方でした。そして僕ら自身が疲れ、ポストモダンの寒々しさが少ししんどく思えるこの2020年のコロナ時代において、極限まで丁寧に「ベタ」を描き切ったヴァイオレット・エヴァーガーデンの物語は、これまでメタな物語が「クリシェ」として冷笑的に切り捨てる傾向があった人間の感情の根源的な部分を繊細に丁寧に描き切ったからこそ、僕のような擦れっからしのメタ大好き人間でも、嗚咽で喉が詰まってしまうような物語になりえたわけです。 さて、ここから物語の中身に