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ブックマーク / www.newsweekjapan.jp (71)

  • 岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高められる次期首相は高市氏だ

    <今の問題は、円高進行のスピードが速すぎること。「円安は害悪」との風説に岸田政権は過剰反応し、8月以降、日株市場は停滞してしまった。誰が次期首相に望ましいか、その経済に対する理解度合いを見れば明白だ> 6月14日の当コラムでは、9月にFRB(米連邦準備理事会)が利下げを開始すると筆者は予想していたため、一部論者が懸念していた円安ドル高は早晩転換するとの見方を示した。 既に、9月18日夜のFOMC(連邦公開市場委員会)における4年半ぶりの利下げ開始は、パウエル議長らによって事実上予告されており、利下げ幅が0.25%か0.50%のいずれになるかが焦点になっている。6月に1ドル150円台後半推移していたドル円が、7月から円高に転じたのは筆者の想定に沿った値動きである。 7月まで散見された、「1ドル160円台を超えて円安が続く」といった自称専門家などによる予想は、メディア受けは良いが、多くは根拠

    岸田政権「円高容認」の過ち...日本経済の成長率を高められる次期首相は高市氏だ
    shibusashi
    shibusashi 2024/09/18
    『「失われた30年は日銀の金融政策の大失敗によってもたらされた」「2回の消費増税とコロナ禍によって、2%インフレ安定が実現しなかった」との、高市氏によるこれまでの金融財政政策についての総括である。』
  • 金融緩和で就業機会が増え、女性活躍の土台が整った──次期日銀総裁候補、植田和男氏の指摘について

    次期日銀総裁候補・植田和男氏は、黒田体制の金融政策に成果がありこれを継続する考えを示した REUTERS/Issei Kato <新総裁候補に指名された植田氏が指摘した、女性、高齢者を中心に雇用拡大がみられたというのは、これまで就業を諦めていた方々に職の機会が見つかったことを意味する......> 日銀の黒田総裁が交代する大きな節目を迎えつつあるが、日の金融市場は落ち着いている。新総裁候補に指名された植田和男氏が国会の聴取において、黒田体制の金融政策に成果がありこれを継続する考えを示したこと、などが市場の安心材料になった。 植田氏は、かつて量的緩和政策に懐疑的な見解を示していたが、考えはやや変わったのかもしれない。黒田日銀が行ってきた金融政策の成果を認識した上で、未完と位置付ける2%インフレ安定の実現を目指すと明言した。 バーナンキ氏や黒田総裁と同様に適切な政策運営への期待 2010年以

    金融緩和で就業機会が増え、女性活躍の土台が整った──次期日銀総裁候補、植田和男氏の指摘について
    shibusashi
    shibusashi 2023/03/08
    『雇用者は2012年末から10年間に+553万人増え、増加率でみれば約+10%である。いわゆる正社員も10年で約+7.5%であり、正社員を含めて、雇用が全般に回復したのが実情である。』
  • 失敗学の研究者が見た、日本人の「ゼロリスク」信奉

    <「信者」を減らさないと、日の将来は暗い。東京五輪を機に、チャンスとリスクを議論して判断できる日へと変わるべきだ> 人間は何かを行う前に、「チャンス」と「リスク」を秤(はかり)に掛けて判断する。東京五輪では、選手が国民に感動を与えることがチャンスで、試合場の選手団や観客から新型コロナウイルスが広がるのがリスクである。 しかし、テレビや新聞はリスクだけを報道し、秤に掛けるような議論は進まなかった。結局、時間切れで中止にはならず、IOC(国際オリンピック委員会)にいいように引き込まれて大会は始まった。 五輪開催が失敗だったか成功だったかは、閉会式まで分からなかった。たまたま日の金メダルが予想以上に多かったから、JNNの世論調査では「開催してよかった」「どちらかといえばよかった」と思う人が61%になった。 もしも予想以上に少なかったら、五輪はコロナ第5波の主因として失敗の烙印を押され、自民

    失敗学の研究者が見た、日本人の「ゼロリスク」信奉
    shibusashi
    shibusashi 2021/09/22
    『ゼロに限りなく近いがゼロではない』←この表現は使える。
  • 日銀審議委員に野口教授提示で、菅政権のマクロ経済政策への懸念はかなり低下した

    金融財政政策を間違えると、政権運営に大きなダメージが及ぶ...... REUTERS/Issei Kato/ <日銀行の新たな審議委員として、野口旭専修大学教授を任用する人事案が国会に提示された意味とは......> 政府は、1月20日に日銀行の新たな審議委員として、野口旭専修大学教授を任用する人事案を国会に提示した。野口教授は、ニューズウィーク日版「ケイザイを読み解く」で、骨太の経済コラムを書かれており、ご存知の読者も少なくないだろう。また、当該コラムなどに依拠して、「アベノミクスが変えた日経済」が2018年に出版されており、これらに金融財政政策に関する野口教授の考え方が明確に示されている。 日銀の金融緩和は手緩い、という野口教授の主張 野口教授の日経済に対する考えを、筆者なりに総括すると、インフレ率がゼロ以下まで低下し、そして不完全雇用・総需要不足の日では金融財政政策を徹底

    日銀審議委員に野口教授提示で、菅政権のマクロ経済政策への懸念はかなり低下した
  • 【調査報道】中国の「米大統領選」工作活動を暴く

    トランプvsバイデンの選挙に先立つ世論操作は氷山の一角。「中国人はSNSが下手で文章も説得力に欠ける」が、既に600団体がアメリカ社会に浸透していることが分かった。4年前のロシアとの違い、中国共産党の真の狙いは――。誌「アメリカ大統領選 中国工作秘録」特集より> 熱波にもコロナ禍にも負けず、民主・共和両党の選挙マシンが秋の米大統領選に向けてギアを上げていたこの夏、ローラ・ダニエルズとジェシー・ヤング、エリン・ブランの女性3人組も休むことなくフェイスブックやツイッターに書き込みを続け、アメリカ社会の現状を熱く論じていた。政府のコロナ対応のまずさや人種差別を批判し、大統領のスキャンダル報道には「よくないね」を付けてせっせと転送する。 しかし彼女たちの投稿には不自然な点があった。別な人の投稿とそっくりな文章があったし、具体的な出来事には触れず、頭からアメリカとその民主的な仕組みをこき下ろす書

    【調査報道】中国の「米大統領選」工作活動を暴く
  • 学者による政策提言の正しいあり方──学術会議問題をめぐって

    <日学術会議の最大の問題は、科学的観点のみによっては合意不可能であるはずの政策的な判断を、あたかも専門家による科学的観点からの総意であるかのように装って一般社会に提示している点にある...... > 菅義偉政権が誕生して一ヵ月にもたたないうちに、思いもよらない騒動が巻き起こった。それは、日学術会議が決めた新会員候補のうちの6人の指名を政府が拒否したという、いわゆる学術会議問題である。この問題が明らかになって以来、メディアやネットでは、この政府の対応の是非をめぐる論議が拡大し続けている。 筆者は、政府に就任が拒否された6人の方々の学問的な業績や政治的な立場については、ほとんど何の知識も持っていない。したがって、この政府の判断それ自体に関しては、筆者は是とも非とも言うことはできない。にもかかわらず筆者がここで私見を述べる必要があると考えたのは、この問題が「一般社会に対する専門家の政策的な発

    学者による政策提言の正しいあり方──学術会議問題をめぐって
    shibusashi
    shibusashi 2020/10/18
    『どのような政策提言もそれが究極的には必ず何らかの価値判断に基づくものである以上「〜である」という科学的実証の領域と「〜すべきである」という規範の領域を明確に切り分けて議論することが必要』
  • 中国がチベットで労働移動政策強化、職業訓練へて建設現場などに

    中国政府は、チベット自治区の農村部の労働者を最近建てられた軍隊式の訓練施設に移動させ、工場労働者になるための訓練を受けさせる政策を拡大している。写真はラサのポタラ宮殿と中国国旗。2015年11月撮影(2015年 ロイター/Damir Sagolj) [北京 22日 ロイター] - 中国政府は、チベット自治区の農村部の労働者を最近建てられた軍隊式の訓練施設に移動させ、工場労働者になるための訓練を受けさせる政策を拡大している。新疆ウイグル自治区でも同様のプログラムが進行しており、人権擁護団体からは強制労働として問題視されている。 国営メディアの多数の報道やチベットの政府機関の政策文書、ロイターが確認した2016─20年発行の調達申請書によると、中国政府はチベットの農村部労働者の自治区内外への大量移動について割当人数を設定した。 チベット自治区政府のウェブサイトに先月、掲載された通知は、この政策

    中国がチベットで労働移動政策強化、職業訓練へて建設現場などに
  • 雇用が回復しても賃金が上がらない理由

    <現在の日経済は、一定の景気回復によって雇用は改善したにもかかわらず、未だ十分な名目賃金上昇が実現されていない。その理由は何か。そして、今後の経済政策で重要なことは何か> 日経済は現在、深刻な人手不足に直面しているかのように言われている。確かに、今年に入って、完全失業率はバブルが崩壊して以来久しく見ることが出来なかった2%台にまで低下した。有効求人倍率にいたっては、バブル期のそれを飛び越えて、高度成長の余韻が残っていた1970年代初頭の水準にまで改善した。 そうした中で、パートやアルバイトなどの非正規雇用の賃金は、明確に上昇し始めている。しかしながら、正規雇用も含めた就業者全体の賃金上昇トレンドは、未だにきわめて弱々しい。 日の就業者の平均的な名目賃金すなわち額面上の賃金は、バブル崩壊後もしばらくは上昇し続けていたが、消費税増税を発端とする1997年からの経済危機を契機に下落し続ける

    雇用が回復しても賃金が上がらない理由
    shibusashi
    shibusashi 2020/09/19
    2017年の記事。『企業の労働需要は賃金が高ければ減り低ければ増える。それは、より低賃金である非正規雇用の比率が大きくなれば労働需要はそれだけ増え、(完全雇用となる)失業率はその分だけ低下して当然である』
  • 政治家にとってマクロ経済政策がなぜ重要か──第2次安倍政権の歴史的意味

    安倍以降の政権は、マクロ経済政策について政治の側から明確な指針を提示することができるか...... Franck Robichon/REUTERS <第2次安倍政権の歴史的意義とは、「政治によるマクロ経済政策の丸投げシステム」そのものを終わらせた点にある......> 第2次安倍晋三政権が、唐突にその終焉を迎えた。しかし、第1次安倍政権がわずか1年弱で終わったのに対して、第2次政権は歴代最長の7年8か月を刻んだ。その違いを生み出した最も大きな要因とは何かといえば、それはマクロ経済政策の有無である。 第1次安倍政権は、財政再建よりも経済成長を優先するという「上げ潮戦略」の提唱者であった中川秀直が幹事長ではあったものの、政権自体の政策方針は、小泉純一郎政権以来の「構造改革」路線の継承という以外にはほとんど不明であった。それに対して、第2次安倍政権は、その発足当初から、デフレ脱却を政策目標とし、

    政治家にとってマクロ経済政策がなぜ重要か──第2次安倍政権の歴史的意味
    shibusashi
    shibusashi 2020/09/05
    『石破さんの支持が上がらないのはマクロ経済政策がないから。ブログを見たけれどもどこかの夕刊コラムみたいで全然政策のことを書いてない。マクロ経済政策の無い政権は支持できない』やるなー、薄口政治評論家
  • 中国が傲慢な理由で強行した「モンゴル語教育停止」の衝撃

    IT時代には不向きな言語との差別的言説で同化政策が一層進む> モンゴル語教育安楽死を命じる――中国政府は6月末、そのような政治的目的を帯びた秘密文書を内モンゴル自治区に届けた。今秋の新学期から、学校におけるモンゴル語教育を停止するという内容である。 まず通遼市という地域から始まるが、誰もここだけで終わると思っていない。具体的には小学校では「道徳」の科目の授業を中国語で行い、中学以上では「モンゴル語」科目以外を全て中国語に切り替える。その口実も実に傲慢だった。 いわく、モンゴル語は先進的な科学技術中国流の思想道徳を教えるのに不向きで、「優れた言語」である中国語こそがIT時代にふさわしいという。 最初は大勢のモンゴル人教師が失職の危機感から抵抗を始めたが、次第に民族文化そのものが消される同化政策に対する怒りが拡大している。特定の言語が現代の科学技術に適していない、という差別的な言説を信じ

    中国が傲慢な理由で強行した「モンゴル語教育停止」の衝撃
  • 日本経済は新型コロナ危機にどう立ち向かうべきか

    <新型コロナ危機、東京オリンピック延期へのあるべき経済政策を考える。そして、「政策の是非を判断するための思考枠組み」を明確化する......> 世界は現在、まさに新型コロナ危機によって覆い尽くされている。幸いなことに、中国以外では最も早く感染事例が報告された国の一つであった日では、少なくとも現在までのところ、その後の一部欧米諸国のような社会全体での爆発的な感染拡大は生じていない。しかし、その日でも、旅行業、飲業、レジャー産業、スポーツや音楽等のエンターテイメント産業等が典型であるように、それに伴う深刻な経済活動停止状況が生じている。その負の影響は累積的に拡大しつつあり、否応なく経済全体に及び始めている。 この状況をこのまま放置できないことは、誰の目からみても明らかである。実際、政府は既に何弾かの緊急経済対策を打ち出している。また、政治の世界では、与野党を問わず、さまざまなレベルの大小

    日本経済は新型コロナ危機にどう立ち向かうべきか
    shibusashi
    shibusashi 2020/04/01
    『バブル崩壊後の30年間、一度も完全雇用を達成したことがなかった。それは旧日銀と財務省が金融や財政の引き締めを繰り返したためである。』
  • 新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から

    中国の研究者らが新型コロナウイルスのゲノム配列に関して暫定的な研究結果を発表した。それにより日で感染しているウイルスのルーツや種類も見えてきた。飛行機搭乗とも関係し日の対策の是非の参考になる。 ウイルス経路マップ──日人感染者のルーツとウイルスの種類が見える 2月21日、中国科学院シーサンパンナ熱帯植物園(雲南省)に在職する研究者である郁文彬博士(Wen-Bin Yu Ph. D)等が「新型コロナウイルス肺炎の進化(変異)と感染を全てのゲノム学的なデータに基づいて解読する(Decoding evolution and transmissions of novel pneumonia coronavirus (SARS-CoV-2) using the whole genomic data)」という論文(以下、論文)を中国科学院の学術論文プレプリント・サーバーChinaXivに投稿した

    新型コロナ日本感染ルーツとウイルスの種類:中国のゲノム分析から
  • MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(6完)─正統派との共存可能性

    ●これまでの記事はこちら <モズラーによって発見されたMMTの中核命題や、それに基づく会計分析それ自体は、必ずしも正統派と共存不可能ではない......> 経済学派としてのMMTの一つの大きな特徴は、自らを正統派と対峙する異端派として位置付け、現代の主流派マクロ経済学を全体として拒絶している点にある。その主流派ないし正統派としてMMTの主な批判となっているのは、新しい古典派マクロ経済学というよりは、ニュー・ケインジアンによるNMC(新しい貨幣的合意)である。これは、現代のマクロ経済政策とりわけ金融政策に理論的根拠を提供しているのが、もっぱら広義のニュー・ケインジアン経済学であるという事情を反映している。 MMT派はまた、新古典派的総合の系譜にある新旧のケインジアンを亜流ケインジアン(Bastard Keynesian)と呼び、彼らと対峙し続けてきたジョーン・ロビンソンやハイマン・ミンスキー

    MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(6完)─正統派との共存可能性
  • 米下院、ウイグル人権法案を圧倒的多数で可決 米中の新たな火種になる可能性も

    12月3日、中国政府による新疆ウイグル自治区のイスラム教少数民族ウイグル族への弾圧を巡り、米下院はトランプ政権に強硬な対応を求めるウイグル人権法案を407対1の圧倒的賛成多数で可決した。写真は新疆ウイグル自治区グルジャ市で警備にあたる警察官。2018年9月撮影(2019年 ロイター/Thomas Peter/File Photo) 米下院会議は3日、中国政府が新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族などイスラム教徒を弾圧しているとして、トランプ政権に強硬な対応を求めるウイグル人権法案を407対1の圧倒的賛成多数で可決した。 中国外務省は、同法案は重要分野における米中の協力に影響を及ぼすと指摘した。 上院が9月に可決した同様の法案を修正し、より強硬な内容にした。具体的には、共産党政治局委員で同自治区の党委員会書記を務める陳全国氏を制裁対象に指定するようトランプ大統領に求めている。成立すれば、

    米下院、ウイグル人権法案を圧倒的多数で可決 米中の新たな火種になる可能性も
  • 香港区議選:中国共産党は親中派の勝利を確信していた(今はパニック)

    林鄭月娥行政長官(左)のボス、習近平も幻想を見せられていた(2017年7月1日) REUTERS/Bobby Yip <香港デモ隊は一握りの「暴徒」で、その他の「声なき多数派」は親中派を支持している――それは中国が仕組んだプロパガンダではなく「信仰」だった。人民日報や環球時報のジャーナリストたちに聞いてわかった中国指導部の驚くべき慢心ぶり> 香港で11月24日、区議会議員選挙の投開票が行われた。夜になって開票作業が進むなか、民主派陣営は熱狂に包まれていた。選挙妨害や不正の可能性を懸念しつつも勝利を見込んでいた民主派だったが、ここまでの圧勝は想定外だったためだ。 投票率は過去最高。夜半までには民主派が獲得議席数を前回選挙の3倍(452議席中389議席)に増やし、親中派(61議席)に対する逆転勝利を決定づけた。民主化デモに対する警察の強硬姿勢に市民の怒りが高まるなか、親中派の候補者たちが次々と

    香港区議選:中国共産党は親中派の勝利を確信していた(今はパニック)
    shibusashi
    shibusashi 2019/11/27
    『この見当外れの予想からは、厄介な問題が透けて見える。中国共産党の上層部が、香港について自分たちが発信したプロパガンダを信じ込んでいるという問題だ』中共さん、極端な方向に反応しかねんのが怖いなぁ
  • MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(5)─政府予算制約の無用論と有用論

    ●これまでの記事はこちら <MMTとヘリコプター・マネー論は、しばしば混同されるものの、基的に似て非なる政策戦略である......> MMTによれば、現代の主流派マクロ経済学の大きな誤りの一つは、「政府の赤字財政支出は、希少な民間貯蓄を奪い、利子率を引き上げ、民間投資をクラウド・アウトする」と論じている点にある。MMTはそれに対して、政府の赤字財政支出は、それ自身が民間にとっての資産(貯蓄)となるので、民間投資のクラウド・アウトは原理的に生じないと主張する。これは、赤字財政は原則的に許容されるべきというMMTの結論を支える一つの大きな論拠となっている。 連載(4)で検討したように、正統派からみたこの議論の問題点は、MMTが政府の赤字財政支出を基的に金融的な側面でのみ捉えており、財市場に与える影響を考慮していないところにある。というのは、民間投資のクラウド・アウト、金利上昇、インフレの

    MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(5)─政府予算制約の無用論と有用論
    shibusashi
    shibusashi 2019/09/08
    『新旧ケインジアンの多くが含まれる赤字ハト派と、ラーナーからMMTに至る赤字フクロウ派は、少なくとも不況下あるいは不完全雇用下では、政府による積極的な赤字財政という政策戦略を共有できる』
  • MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(4)─クラウド・アウトが起きない世界の秘密

    ●これまでの記事はこちら <MMTは「政府財政は景気循環を通じて均衡する必要すらない」と結論しているが、それがどのような推論から導き出されるのかを検討する......> その主唱者たちによれば、MMTの目的は、主流派マクロ経済学という「歪んだメガネ」によって生み出された財政と金融に関する誤った観念を排し、それをMMTから得られる正しい把握に置き換えていき、それを通じてマクロ経済政策を正しい方向に導いていくことにある。MMT派の教科書Macroeconomicsの第8章では、そのMMTによって駆逐されるべき主流派の誤謬(Mainstream Fallacy)として、以下の9つの命題が掲げられている。 誤謬その1:政府は家計と同様な「予算」の制約に直面している。 誤謬その2:財政赤字(黒字)は悪(善)である。 誤謬その3:財政黒字は一国の貯蓄を増加させる。 誤謬その4:政府財政は景気循環を通じ

    MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(4)─クラウド・アウトが起きない世界の秘密
    shibusashi
    shibusashi 2019/09/08
    『正統派の多くは、「赤字財政が明確に許容されるのは基本的には不完全雇用時である」と考える』
  • 香港デモ、進化系ゲリラ戦術の内側

    <香港警察が力で抑え込みにかかっても、情報戦に長け、デモ隊を守る新戦術を次々と編み出す変幻自在さに、香港と中国の両政府はついていけない> 逃亡犯条例改正案への抗議として始まったデモは、香港の将来を左右する壮大な闘いとなった。 光輝く超高層ビルが林立し、グローバル企業の拠点や超高級ホテルが集まる香港。その間の細い通りを何百万もの人々が埋め尽くし、中国土の締め付けに抗議している。 1997年にイギリスから中国に返還される際に保障された香港の特殊な地位は、これまでずっと政治的な火種だった。表に出ない形で不満がくすぶる時期もあれば、中国寄りの当局に抗議し、民主化を求めて炎が噴き出す時期もあった。 「一国二制度」の下、香港市民には、中国土の住民が享受できない個人の自由や政治的自由が認められている。ただし、返還時の合意では、こうした権利は50年間の期限付きで、2047年までしか保障されない。 欧米

    香港デモ、進化系ゲリラ戦術の内側
  • MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(3)─中央銀行無能論とその批判の系譜

    MMT派と正統派とは、基的に水と油にように混じり合わないマクロ経済思考の上に構築されている。しかし、反緊縮正統派の側からは時々「少なくともゼロ金利であるうちはMMTと共闘できる」といった発言が聞こえてくる。それはなぜか......> ●前回の記事はこちら: MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(2)─貨幣供給の内生性と外生性 MMT(現代貨幣理論)の主唱者たちによれば、MMTと正統派の最も大きな相違の一つは、前者が貨幣内生説であるのに対して後者は貨幣外生説を信奉している点にある。しかしながら正統派にとってみれば、貨幣内生と外生の相違は、単に現実を理論化する場合の抽象の仕方の相違にすぎない。実際、近年のニュー・ケインジアンのモデルも含めて、ヴィクセルに発する系譜のモデルは基的にすべて貨幣内生である。 正統派にとっては、質的な対立点はまったく別のところにある。それは、貨幣供給の内生性を強

    MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(3)─中央銀行無能論とその批判の系譜
  • MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(1)─政府と中央銀行の役割

    <現在、世界および日の経済論壇において、賛成論と反対論の侃々諤々の議論が展開されているMMT。その内実を検討する......> 消費増税を含めた財政をめぐる論議が続く中で、MMT(現代貨幣理論)に注目が集まっている。7月中旬には、その主唱者の一人であるステファニー・ケルトン(ニューヨーク州立大学教授)が来日し、講演や討論を行い、昨今のMMTブームを反映するかのように大きな盛り上がりを見せた。その模様は一般のマスメディアでも幅広く報じられた。 MMTの生みの親であるウオーレン・モズラーのSoft Currency Economics II序文によれば、その最初の契機は、国債トレーダーを経て証券会社の創業者となったモズラーが、1990年代初頭に当時「財政危機」が喧伝されていたイタリア国債の売買を行った時に得た一つの「発見」にあった。その把握が、それ以前からポスト・ケインジアンの一部に存在して

    MMT(現代貨幣理論)の批判的検討(1)─政府と中央銀行の役割