養老 貯蓄は苦手で、結婚するまで貯金は一銭もありませんでしたし、今もあると使ってしまうタイプ。この年齢になってもこんなに忙しいのは、好きなことをする時間のために稼ぐ時間をあんばいしなくちゃいけないからです(笑)。 けれども世代的に、将来のおカネに対する不安というのは全く感じませんね。なぜかというと、おカネの価値が完全に破裂してしまった時代を知っているからです。 うちの父は戦争中、昭和17年に結核で死にましたが、僕の大学の学費を賄えるだけの保険金を残してくれました。ところが戦争に負けた後、猛烈なインフレが起こり、さらに新円への切り替えがあって、それまでのおカネはあっという間に全部紙くずになってしまった。 当時僕は小学校低学年で、自分でおカネをどうこうする年齢ではありませんでしたが、「おカネなんてあてにならない」ってことは肌身に染みて理解しました。 おカネとは要するに人間が作った約束事、ためて