アメリカのボストン美術館に長く眠っていた葛飾北斎(1760〜1849年)の肉筆画帖3冊を丸ごと再現した本が刊行された。『北斎漫画[肉筆未刊行版]』セーラ・E・トンプソン編、小林忠監訳(河出書房新社・3900円+税)だ。幻のボストン画帖は、代表作『北斎漫画』の続編として企画された絵本の原画とみられている。1990年代後半に発見され、一部は日本でも公開されたが、全容を紹介する出版物は初めて。 図版だけを載せるのではなく、画帖そのものを撮影した写真を原寸大で掲載している。ページを繰ると、実際に画帖をめくっているような感じがして面白い。 当時の製作法では原画は消耗品。絵本が刊行されていれば失われていた肉筆の版下絵が、どうやってアメリカに渡ったかなどの経緯は不明。ただ印刷に関する指示なども書き入れられていて、出版寸前だったことがうかがえる。 すべての図版に同美術館の学芸員による丁寧な解説がつく。のち