ベスト・オブ・谷根千 [編著]谷根千工房[掲載]週刊朝日2009年3月6日増大号[評者]永江朗■こんないい雑誌が休刊するなんて この夏で「谷根千」が休刊する。「谷根千」とは地域雑誌「谷中・根津・千駄木」の通称。一九八四年に、仰木ひろみ・森まゆみ・山崎範子の三人がはじめた雑誌である。東京の下町、谷中・根津・千駄木の雑誌だ。タウン誌ではなく地域雑誌。店やイベントの紹介よりも、街に住む人の話、街の歴史と現在の紹介が中心だ。 メジャーな流通には乗らず、地域内の書店および協力店、そして地域外の協力店でしか買えない。それにもかかわらず知名度が高いのは、内容のおもしろさと志の高さによる。この小さな雑誌によって、谷中・根津・千駄木は観光スポットになったし、下町散歩ブームもこの雑誌がきっかけだ。作家・森まゆみの活躍も、根拠地として「谷根千」があってこそ。 「谷根千」四半世紀の傑作選、『ベスト・オブ・谷根千』