社会が変わってしまったと感じる人は多いのではないか。時代は新たな殖産興業・富国強兵、米国に寄り添う新しい大日本帝国に向かっているように見える。 なぜ自分は危機的状況をうがつ仕事を続けてきたのだろう。経済ジャーナリストである著者は、自らの根っこを掘り下げる。 11年間シベリアに抑留された父と東京大空襲の被災者だった母、戦争をひきずる両親は東京・池袋で鉄屑屋を営み、必死に昭和を生き抜いた……。 失われたものは、誇りを持って生きていける自営業の暮らしと経済。自律した在り方を許容する社会。少年漫画の熱狂。「みんなが手と手を合わせれば」の歌。「ネーミング詐欺」ではない政治の言葉。 いわゆる戦後民主主義は共同幻想だったのかもしれない。現実には戦争も差別もあった。しかし体験に裏づけられた夢だった。当時と、平和と平等の理想さえ抱けない現在との差は、とてつもなく大きい。 「今、大きな渦があって、私たちはその