塩野七生による神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世の評伝である。同じ時代を何度も扱っている塩野七生なだけあって,彼もすでに何度も登場している。『十字軍物語』,『ローマ亡き後の地中海世界』,そして『ルネサンスとは何であったのか』。前二つはフリードリヒ2世というと第5(6)回十字軍がハイライトであるので当然だが,最後は意外かもしれない。これは塩野七生の定義するところでは,ダンテに先駆けるルネサンス人としてアッシジの聖フランチェスコとともに挙げられているからである。神ではなく,人間愛にあふれた人間として。 では,すでに何度も描いてきたフリードリヒ2世をわざわざ再度取り上げる意味はなんだったのか,というときちんと意味はある。本書はそのルネサンス人・近代人としてのフリードリヒ2世の姿を中心として描いており,特にフリードリヒ2世が両シチリア王国で法治国家・中央集権的な官僚制国家を作ろうとしていた点を際立って