「“語彙”を与えてくれる映画が陸続と続いている」 ――本書で取り上げられた『シン・ゴジラ』(同映画に勇気づけられる左右の愚昧さと、「破壊の享楽」の不完全性)、『ニュースの真相』(よく出来た映画だが、トランプ現象の背景を捉えきれない)などの批評に登場するモチーフですね。 宮台:そうです。『ニュースの真相』評でも述べたけど、リベラルメディアは今でも「人権・ユニバーサリティ(普遍主義)・近代」万歳といったモード。僕も多勢に無勢だと思ったから、叩き出しゲームに勤しむ連中を<感情の劣化>だと批判する<なりすまし>を続けてきました。ただローティから遡ること50年、批判理論や効果研究が実証したように、ソーシャル・キャピタルの破壊つまり人々の分断と孤立化が進めば攻撃的な排外主義が高まって当然で、ソーシャル・キャピタルを手当てできない限りはどうしようもないのです。<感情の劣化>批判ごときでは何一つ変えること