ナチス・ドイツの最後の防壁となった「ライン川」 レーマーゲンは、まことに小さく閑雅かんがな町で、駅から十分も歩けば中心部を通り抜けてライン川に至り、箱庭細工のように見える東岸のありさまを一望できる。かつて、そこにはルーデンドルフ橋が架かっており、両岸を結ぶ通路となっていたのだが、今日でも、そのなごり、橋塔が博物館となっており、昔を偲ぶよすがとなっている。 だが、八十年近く前、この風光明媚な町は最前線になろうとしていた。ノルマンディに上陸し、激闘を繰り返しながらフランスやオランダ、ベルギーを横断してきた連合国の遠征軍が、ついにドイツ本土への進攻を開始したのである。 これを迎え撃つドイツ軍は前年、一九四四年十二月に発動されたアルデンヌ攻勢に失敗し、戦略・作戦レベルの抵抗力を失ったも同然であった。彼らにできるのは、消耗・疲弊しきった既存部隊と、泥縄どろなわ式に編成された「国民突撃隊(フォルクスシ