自身の記憶や体験を出版できるのは大概成功者と呼ばれる人たちであるが、殺人を犯し死刑を宣告された著者の声は、成功者のそれとは違った価値を持つものに感じられた。 現在の我が国の刑事司法に対する世論は処罰感情に傾くばかりで、罪を犯した者が何かを「表現」した瞬間、インターネット上で声高な非難の声が飛び交うが、真に国全体の犯罪率を下げ、すなわち犯罪被害者を一人でも減らすためには浅薄な糾弾の声よりも、犯罪者の「表現」に耳を傾けることも必要ではないだろうか。 なお決して読みやすくも、表現力豊かでもない文体であるためレビュー点数は抑え目とした。