2011年、世界は二つの深刻なリスクの顕在化に遭遇した。一つは技術のリスク、もう一つは経済のリスクだ。言うまでもなく、それは日本の原子力発電所事故であり、ギリシャの財政問題だ。 リスク――それは、目の前にはっきりと姿を現すまで、「ありえないもの」として取捨される。そして、いざ出現すれば今度は「想定外だった」と責任回避される。 リスクとは何かを、この機会に考えてみよう。 ◇ ゾウとサメは、どちらが危険か。 シカゴ大学経済学部のスティーブン・D・レヴィット教授は近著で、そんな興味深い例を挙げて、リスクの考え方を示している。さあ、どちらが危険だろうか。 ごく素朴な感覚にしたがえば、恐ろしいのはサメだろう。しかし、教授は違うという。教授はこれを具体的な数値を示して、考えてみせる。 「1995年から2005年の記録で、サメの襲撃による世界中での死者数は、年平均で5.9人だった。多い年で11人