酒井隆史『通天閣——新・日本資本主義発達史』を読んだので感想。 本書は、通天閣の周辺、いわゆるディープサウス、大阪新世界界隈で、明治末から昭和期にかけてうごめいたさまざまな人物、運動を縦横に論じる。文庫本上下巻で1000ページ超の大作で、大阪新世界界隈のミクロストリアであり、またある作品・作家に深く分け入る批評であり、あるいは詩論であり…という、ジャンル横断というかジャンルレス、まさに縦横無尽の一大絵巻。 詩人の小野十三郎にはじまり、破天荒な棋士阪田三吉、作家織田作之助、映画監督川島雄三らを導き手にして、都市のありようやその表象、そしてそこで跋扈する市井の人々を闊達自在に描写していく上巻、借家人同盟の首魁、逸見直造という知られざる人物を主役に、大阪界隈で叢生したアナルコ・サンヂカリズム、ボリシェヴィズムなど社会主義の諸潮流の蠢きをたどり、宮武外骨を中継して飛田新地の形成過程をたどりながら、